ヘブンズストーリー

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CSのチャンネルを1つだけ契約してないといけないんでチャンネルNECOを登録しててね。
なんとなくテレビをつけたときにやってた映画を見てるんです。
面白くなければすぐ消しちゃうし、思わず見たくなったものは最後まで見てる。どうしても気になる映画は、録画して後で見てる。
地上派で見たい番組がほとんどなくなってしまったので、今時間があるときはこれを見てる。
有名な映画ももちろんやっているけど、あまり商業的でない感じの地味に惹き込まれるような映画もよくやっている。

今朝は「ヘブンズストーリー」っていう映画を見た。
放送時間を見たら、6時何分~11時何分って書いてあって思わず二度見した(爆)

2010年の映画らしいけど、宣伝結構やってたのかなあ?
佐藤浩市とか柄本明とかも出てたみたいなんだけど、途中から見たんで、大物俳優さんたちが出てるパートは全部見逃した(笑)
でも忍足修吾がよかったなあ。
若いときは普通のイケメン?俳優くらいにしか思ってなかったけど、「リリィシュシュのすべて」でも良かったし、嫌いじゃない。因みにリリィシュシュの主役がまだ子供の市原隼人なんだけど、意外にも結構よかった。そして割と可愛かった。

話を戻して、過去に殺人を犯した青年と、若年性アルツハイマーで人形師のおばさんと、妻子を殺された男性と、その男性の新しい妻子で妻は過去に父親に虐待されたせいで肩耳がきこえない女性と、小さい頃両親を殺された少女と、過去に犯人を殺した警官と、その息子と、警官が償いをする、犯人の母親と、その母親と血は繋がってないけど一応子供である女性。

色んな暴力や殺人によって、人生がめちゃくちゃになった人たちがわんさか出てくるんだけど、それがどこかで偶然絡み合って、しかもやっぱりむちゃくちゃになっていく。一時期幸せを手に入れたとしても、やっぱり最後はむちゃくちゃになる。運命というか、天罰というか、そんな感じの4時間半。

未成年の時に妻子を殺害した青年が忍足修吾。
アルツハイマーになる人形師のおばさんが、山崎ハコ(!)
妻子を殺された男性が、最初バカリズムかと思ったら違う人だった。
両親を殺された少女が、武井咲かと思ったらやっぱり違った。
警官の父親を持つ少年が、森本龍太郎くんかと思ったらやっぱり違った。

と、キャストでうおおっ!となる感じではないのに(ある意味山崎ハコにテンション上がったが)、素朴だけどすごくショッキングで、マニアックでカオスなつくりだけど一貫したテーマがあって、長いんだけど思わず全部見終わってしまった。

途中に時々流れる曲が、ロシア民謡の「黒い瞳」なんだけど、すごく好きな曲なんだこれ。

過去に、妻子を殺害した青年が服役してる刑務所に、若年性アルツハイマーの山崎ハコが訪ねていって、手紙を渡したときから仲良くなって、最終的に山崎ハコが完全にアルツハイマーになっちゃうんだけど、何度か離れようとした忍足修吾がそれでも最後まで一緒にいたくて、山崎ハコが生まれ育った、今は誰も住んでない場所に二人だけの町を作ろうっていって動き出した途端に、忍足修吾に妻子を殺された男性がきて、山崎ハコを殺してしまう。で、怒った忍足修吾がその男性を殺し、自分もその男性に刺されたせいで死んじゃう。
罪もない妻子を殺した行為は一生許されないものだと思うけど、刑務所で更生し、アルツハイマーになった女性を本気で介護してきた忍足修吾が最後、その女性のためにまた殺人を犯してしまうのがすごく悲しい展開だった。最初の殺人と最後の殺人はまったく意味が違うものだけど、殺人は殺人。そして、妻子を殺された男性も復讐のため、刑期を終えた青年を殺害してしまう。
刑期を終えて更生した青年が刑務所の中でみんなに言った言葉が
「これから生まれてくる人に自分のことを忘れないでほしい」
なんだけど、その青年がアルツハイマーの女性と出会い、病気のせいとはいえ、最後は忘れられた状態で、女性も本人も死んでしまう。
すごく皮肉に皮肉を重ねた映画。

オムニバスかと思いきや、全登場人物にどこかでつながりがあって、一つのテーマになる大作。

犯人を殺害した警官の父親が、実生活で副業でバイトしてるときに恨みを買ってた人物か何かに殺される。
その息子が一人残されたところに、父親が償い続けた犯人の母親の血は繋がってない娘がくる。償いのためその娘が大きくなるまでは金を送り続けるって言ってたのに、金が途絶えたからせびりにきたときには、既に警官は殺された後だった。娘は既に25歳で、でも中身は子供だからって警官に金をせびり続ける。警官も寧ろまだ子供だと思い続けていた。しかもクリスマスプレゼントに「ピーポくんのストラップ」を無理やり渡していく。いらねー!ってなってたそのストラップが、後に最後の女性のシーンで携帯につけられているところが悲しいんだ。なんだかんだあの警官父さんにもらったピーポくん、ちゃんと大事にしてたじゃん、、って。
その25歳の娘がどっかの男と作った子供が生まれるのが終盤のシーン。警官の父親を殺された少年も一緒にいる。色んな人が次々に殺したり殺されたりしていく中で、最後にその娘が新しい生命を生んで物語が終わる。

山崎ハコの設定が人形作る人なんだけど、人形を使った舞台演劇を観にいくシーンがちょこちょこ入る。それが不気味なんだけど、死とか老いとか、何か訴えてかけてくる無言劇。

誰が悪いのか、そもそもの発端は殺人を犯した人。でも、あの女の子がもし、妻子を殺された男性に、犯人が刑務所から出てきたことを伝えなければ、犯人の忍足修吾は山崎ハコと幸せに町を作れたし、男性も新しい妻子と幸せに新しい暮らしをできたんじゃないかと。新しい妻子も、せっかく手に入れた幸せを壊されずに済んだんじゃないかと。
でもそれが色んなところで生まれた罰なのかと。
復讐にも罰がある?
殺されたから殺しても何にもならない。
みたいなメッセージもあった。
とても悲しいストーリーなはずなのに、よくあるドラマのように、人が死んだ、可哀想、悲しい、泣ける、といった感情がまったく湧いてこない。涙もまったくでない。でも、それが決して悪いものなんではなく、なんだか、すごく身近に感じるというか、身近に起こり得るんじゃないかとか、もしそんなことが起こったら、きっとこの人たちの気持ちがわかるというか、ああ、気持ちがわかりすぎた場合、感情ってなくなるんだな、と実感した映画です。

どこか不気味で、マニアックで、カオスで、淡々とした感じの映画なのに、や、だからこそなのか、心にぐさっとくる感じでした。

残される人の悲しみを感じるなら、残されないように行きたい。それでも自分で自分を殺さないようにするのなら、人と新しい出会いはしたくない。最後は一人で逝きたい。変な意味じゃなくてね、最後は一人になったら、死別っていう悲しみを多く味わわずに済むじゃないか、とか、ふと考えちゃったのね。いや、この映画を見たから思ったわけじゃなくて、それは普段から思うんだ。
まあ、独りで自由気ままに人生を送りたいっていうただの怠け心が大半ですが(爆)
深い映画だったな。

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